ポルノグラフィティ16th ライヴサーキットUNFADEDは私のためのライブだった。

ポルノグラフィティ16th ライヴサーキットUNFADEDの個人的な雑記である。


「これは私のためのライブだった」平成最後の年越しの一日前、12月30日のライブ中に、私は隣にいた友人に思わずそう言ってしまった。



今回のライブ、UNFADEDは「色褪せる」という意味の「FADE」に否定形をつけてUNFADED「色褪せない」という意味だということらしいのだが、詳しくはきっと発売されるであろうDVDとBluRayを観るか3月24日(日)夜8時からWOWOWで放送される横浜アリーナの公演を観てハルイチさんの説明を聞いてほしい。

このハルイチさんの説明でもあったのだが、今回は普段のツアーのようにひとつのアルバムの世界をテーマにツアーをするわけではなく、サブスクリプションサービス(意味は検索してほしい)による全曲配信が開始されたこともあり、今までのポルノグラフィティすべての曲が対象になった、ファンからしたら「何が出てくるかわからないびっくり箱、ロマンスポルノ(ポルノグラフィティのツアーではない大型ワンマンライブ)風の全国ツアー」ということになる。全曲配信サービスはすごい。ほんとうに助かる。

私は西日本豪雨の被害を受けて自宅が全壊しており、CDは発掘できたがCDを流す機器は壊れてしまったので、スマフォだけでポルノグラフィティの曲すべてが聴けるのはとても嬉しいことだった。もちろんラジカセを1台購入したし、車のステレオでも聴けるのだが、以前はCD5枚を入れられるコンポで聴いていたためCD1枚1枚変えるのは(とくにシングルは)なかなかに手間であった。全曲配信サービスはすごい。欲を言うならポルノグラフィティの歌うPOISONを入れてほしい(布袋さんのはあった)。



7月7日に被害を受けて、ポルノグラフィティ関連で安堵したことは「しまなみロマンスポルノのチケット、今回は友人に取ってもらってよかった」ということだ。しまなみロマンスポルノとは、ポルノグラフィティの故郷広島での凱旋野外ライブにして、メジャーデビュー20周年目に突入する2018年9月8日と翌日9月9日に行われる予定だったライブのことだ。チケットが水没せずにすんだから、ライブに行ける。途中で広島の被害により開催が危ぶまれたが、9月8日は雨がひたすら降る中で開催された(翌9月9日は残念ながら中止になった。それを受けて行われたライブビューイングが伝説だったのだがそれに触れると長くなりすぎるので割愛する。頼むから一連の流れを、NHKさんとも協力して是非とも映像化してほしい。公式さんお願いします) 。

9月8日に向かうバスの中で、友人とライブに行くときいつもお決まりで行っている「セトリ予想」をした。その中で悩んだのが、「∠RECEIVERをやるのかどうか」だった。私たちの頭にあったのは2011年の9月に行われたライブ、つま恋ロマンスポルノ~ポルノ丸~である。東日本大震災を受けて、東北に船を送ろうということでライブのタイトルが「ポルノ丸」だった。詳しくはDVDとBluRayが発売されているので観てほしい。真夏のような暑い9月の、アンコールラストお馴染みのジレンマを終え、ああもう終わりなんだとおもっていたところで、ポルノグラフィティのおふたりがステージ中央で東北に贈った歌が、∠RECEIVERだった。曲についてはアルバム∠TRIGGERを買うかサブスクリプションサービスで聴いてほしい。『雨が家を沈め 波が町ごとさらった 奪った』という歌詞から始まるこの曲をあの日あの時あのタイミングで歌うことは勇気もいったと思うが、それ以上に強い思いがあったのではないだろうか。しかし西日本豪雨のすぐあとのしまなみロマンスポルノでそれをやると、正直ポルノ丸そのまますぎないか?という気持ちもあった。結果的に言うと∠RECEIVERは歌われず、ポルノグラフィティは別の角度から被災地を応援、というより被災地と協力するものを用意してくれていた(会場であり、ゆるキャラであり、セトリであり、9月9日には実現しなかった地元の学生たちとのコラボであり)。そこで、なんというか、「被災者としてポルノグラフィティのライブに行く私」は完結した。つもりになっていた。

今回のライブはとにかくなにがくるかわからない期待に胸を膨らませていた。とくに絶対にやるであろう2018年9月28日に配信限定でリリースされたZombies are standing outがとても楽しみであった。Zombies are standing outは凄まじい曲だ。まだ聴いていないひとはサブスクリプションサービスか配信サイトで購入してほしい。せめてYouTubeでショートバージョンでいいから聴いてほしい。この曲が作曲アキヒトさんで作詞ハルイチさんというだけで私は震えた。そして曲が先にできて、この音からゾンビをテーマに持ってきたセンスにも震えた。曲を聴いて震えてほしい。カッコイイとはこういうことである。

https://youtu.be/q1UXQS1qxsQ

とにかくZombies are standing outが楽しみで楽しみで、そのことで頭がいっぱいだった。カウントダウン前日の公演、次の日のチケットもあり、年越しがポルノグラフィティというのは2011年の年末、幕張ロマンスポルノ〜DAYS OF WONDER〜以来で、そちらも楽しみだった(WONDERについてはDVDとBluRayが発売されているので観てほしい。幻想的で美しくもロックなポルノグラフィティの世界を見ることができる)。

UNFADEDのセットリストについてはもう唸り声を上げるしかなかった。こう来るか、の連続。私は3公演に参戦し、それぞれ中くらい近い、けっこう遠い、かなり近い席を体験したが、ライトやモニターの使い方が秀逸で、近くの席だとわからないカッコ良さも随所に散りばめられていた。余談だがポルノグラフィティでライトと言えば2012SparkのPVがハチャメチャにカッコイイので観てほしい(さらに余談だが2012Sparkを聴くたびに、「あれ、2012Sparkが2012年の曲……?」となる謎の現象に襲われる。大人になってからの月日ははやい)。

https://youtu.be/H4mAOHO18Ws

閑話休題。すべてが素晴らしすぎるライブで、Zombies are standing outも凄まじい存在感とパフォーマンスで最高のZombies are standing outを見せてくれた。Zombies are standing outを聴きながら「このZombies are standing outの演奏が終わったらもう1回Zombies are standing outをしてほしい」と思ったのを覚えているくらいZombies are standing outが大好きだ。

しかしながら、私がUNFADEDで一番記憶に残っているのはZombies are standing outではないのである。

今回のセットリストは公式からツアー終了後に公開されている。

http://sp.pornograffitti.jp/sr/

15公演という少なめのツアーながら曲の入れ替えが複数あり、私も3回行って3回ともセトリが違うという貴重な体験をした(公演数が少なくスタートもいつものツアーより気持ち遅めな時期だったので、クリスマスソングをやる12月25日迄の公演が少ないからだと思うのだがカウントダウンに『世界最速でクリスマスを祝います』とクリスマスソングをしてくれたのも最高だった)。

さてセットリスト、本編ラストの曲、ハネウマの次、ダイアリーか、レギュラーメンバー(ライブでよくやる曲)か。ライブがもう終わってしまう切なさと、次の曲への期待に拳を握りしめ、「色褪せさせない、色褪せてはいけないものがある」というアキヒトさんの言葉のあと、私の耳に入ったのは、目の前に飛び込んできたのは、∠RECEIVERの前奏だった。

その瞬間、私は「ポルノグラフィティのファン」から一気に「被災者」に引き戻された。決して嫌な意味ではなく。

UNFADEDは、本編ラストまでは、復興!応援!そんな色は全くなく、ただひたすらカッコイイ彼らを見るだけで、もちろん彼らもそんなことは一言も発していないし、∠RECEIVERを演奏する前にも災害のことには全く触れていない。それでも、私はかつてないほど泣いて泣いて、アンコールのポルノコール中も泣いていた。嬉しかったのが、友人がこのとき私を抱きしめてくれたことだ。「これは私のためのライブだった」と思わず言った私に、「私も聴きながら同じことを思ったよ」と返してくれた友人。雨が家を沈めて、まるごと沈んだ町の出身であり、あの日あの時、つま恋で∠RECEIVERを聴いていた我々のためのライブだった。

しかし、私のためのライブであると思ったあと 、私はポルノ丸のことを思い出していた。あの日の∠RECEIVERは東北のひとのための歌、今回の∠RECEIVERは私のための歌、そう考えてしまったし、それも間違いではないと思うが、この歌は受信者の歌だ。星の裏側で、足元で起きている、たとえ自分が関われないような出来事でも、逃げずに受信する受信者(∠RECEIVER)の歌。ポルノ丸のとき、私はちゃんと受信できていなかったのではないか?

日本で自然災害が多発して、SNSが浸透している中、自分が被災していなくても、家族、親戚、友人、知り合い、芸能人、誰かしらひとりは知っているひとがなにか被害を受けている、今はそんな時代ではなかろうか。誰かになにかがあったこと、それを受信して、常にボランティアをしろ募金をしろ、そういうことではなくて、受け止めて、自分なりになにかを思うことがあったか?

これは2018年の災害の被災者だけでなく、東日本大震災の被災者にも、もっと言えば曲のきっかけだったスマトラ島沖地震の被災者にも、ほかのいろいろななにかに傷ついたひとへ「忘れてないよ、記憶から色褪せてないよ」というメッセージでもあるのではないか?

よく考えて、受信して。ポルノグラフィティから私への発信、私から私への発信、それをようやく受信したのが今回の∠RECEIVERだ。



この曲はすべてのひとへの歌であり、UNFADEDは私のためのライブであり、あなたのためのライブでもある。



上手いと思うところはこの曲が本編ラストであり、アンコールではガラッと変わって賑やかで可愛く楽しいパフォーマンスを見せてくれた。アンコールラストのライラもいい曲なので聴いてほしい。

何が言いたかったのかまとめると、私の血肉、遺伝子、思考回路はポルノグラフィティで出来ているということである。ありがとうポルノグラフィティ、ありがとう。もうポルノグラフィティのおふたりが息をしているだけで興奮する脳に作り替えられているのに、いつも期待を受け止めて豪速球(ストレートだったり変化球だったり)を投げ返してくれて、ほんとうにありがとう。





そんなそもそも神がかっているポルノグラフィティが「神vs神」と銘打ったタイトルから期待で震えるライブが2019年9月7日-8日に行われるらしいので、もしポルノグラフィティのライブに行ったことはないがこの文章をここまで読んでくれて、時間と金銭に少し余裕があるひとは是非東京ドームに行って、一緒に伝説の目撃者になってほしい。