積み上げてきたもの含め最高の景色を見せてくれたポルノグラフィティ19thライヴサーキット "PG wasn't built in a day"

ポルノグラフィティ19thライヴサーキット "PG wasn't built in a day"の個人的な雑記である。すべての文の末尾に※個人の感想がつく。

 

4年半ぶりの声出し解禁のライブだった。

 

博多に向かう新幹線の中で友人といつものようにセットリストの予想を立てていて、そりゃあ声出す曲をいくらかやるじゃろうてでも初っ端は緩やかな曲じゃろうよ、と言っていた生ぬるい考えを出だしからぶち壊してくれるサイコーのライブだった。

 

ポルノは一日にして成らず、建築、積み上げのイメージからか城のようなセットと花道のある会場。花道の目の前だったので、席の列数的には後方だが体感ほぼほぼ目の前の席だった。

 

一曲目、Century Lovers。

偉大な鳥山明氏の訃報からそう日が経っていない中、なんだかドラクエのようなカッコイイ曲がだんだんと変化していって、やがてセンラバになる。一曲目から!?とテンションのギアがいきなり最高潮に引き上げられ、数年ぶりの腕を振りながらフーフーと叫ぶ儀式に文字通り狂喜乱舞した。

 

二曲目、テーマソング。

思わず呼吸が止まったあと、号泣である。いつかみんなで、声を出せるときが一緒に歌いたいといつか言っていた曲で、前回のライブでは結局声を出すことができなかった曲。客席を映すカメラで泣いている人がたくさん映っていてまた泣いた。決して世の中はあの頃より前に戻ったわけではないし、完璧にすべての脅威がなくなったなんてことはない。それでも彼らはエンターテインメントをずっと提供し続けてくれていて、いつかの約束だって叶えてくれた。一緒に歌うことができてうれしかった。

 

三曲目、キング&クイーン。

クラップとコールアンドレスポンスの曲が続いて、手加減をする気は全くないことが痛いほど伝わってきた。テーマソングではボロカスに泣いてどうしようもなかった視界も落ち着いて、ド直球に背中を押してくれる曲へ応えるように声を出した。

 

四曲目、Mugen。

「なんかMugenってなんかめちゃくちゃライブでやってる感じがするよね、さすがに今回Mugenきたら笑うわ、好きだけど」という会話を新幹線の中でしたばかりだったので友人と笑った。でもそれはそれとして久しぶりのウォウォウォーオ!は大興奮である。

 

 

五曲目~REUNION、俺たちのセレブレーション、アニマロッサの明るめのカッコイイ曲が続いてからの変な踊りもといミュージック・アワー。後述するが、私は途中までこれが25周年の周年ライブだということを意識しておらず、俺たちのセレブレーションという15周年の曲をしっかりと入れてくれたことにあとから気付いて嬉しくなった。

 

九曲目、Sheep。

ここでセンターステージへ移動となり、かなり距離が近くなりわけがわからなくなる。Sheepがライブで聴けるだけでもかなり興奮したがさらにアコースティックバージョンが聴けるとは。アラフィフのお兄様がティーンエイジの曲を歌って全く違和感がないところがすごい。

 

さらにジョバイロもアコースティックバージョンが続いてから、フラワー、夜間飛行。フラワーと夜間飛行の映像がかなりよく、ああこの曲、すごく、素敵なんだよなあ、と改めていしみじみと身に染みた。友人曰く「映像の画質がいつもよりいい気がする」とのことだった。

 

 

友人と「ハイパー晴一タイム」と呼んでいる楽器だけのハイパーカッコイイ演奏のあと、今回一番の衝撃がくる。

 

 

十三曲目、オレ、天使

背中に羽根をつけて出てきた岡野昭仁くん(49)。羽根!?カワイイ!?なにあれ!?と戸惑いと笑いと慈愛と様々で騒ぎながら、曲が始まる。録音音声ではなく昭仁さんが実際にあの台詞を言っているのを見たのはかなり久しぶりなような気がする。以前、別のライブのときにもう台詞言うの恥ずかしいんだろうか?というような話を友人としたのだが、それ以上のことを堂々とやって堂々と台詞を放ち、ハチャメチャにカッコよく歌い上げていて、最高だった。誰かにやらされたのだろうか?と話していたら後日本人がツイッターでこの後の流れ含めてのブロックが重くなりすぎないように緊張と緩和を作りたかったとのことで、めちゃくちゃ本人の意思だったところも大好きだった。ちょっと緩和しすぎてごめん。私が死んだときに見る光景はあれがいいなと思えた。

 

十四曲目、170828-29。

この曲は聴くたびにロックンロールのことはあんまりよくわかっていないけれど、ロックンロールってたぶんこういうことなんだよな、と思う曲で、ご時世かな?この曲を持ってくるところ、本当にロックだと思う。ピースピースと騒いで楽しんでいる間、後ろの映像で建物が崩れていく。

 

十五曲目、アビが鳴く。

ピースピース騒いだあと、この曲である。オレ、天使がこのブロックの先頭にきていた意味にここでようやく気付いた。「愚か者がはびこるこの街」を天使が見にきたところから人間の争い、祈りに続いている。曲の流れの秀逸さと、厳島神社で神へ奉納された曲を生で聴くことができるという喜びと、平素は真剣に向き合えない平和への気持ちを抱いていた。

 

チベット仏教の仏具でマニ車というものがある。外面や内面にお経が刻印された筒状の機器で、それが回ると回しただけお経を唱えるのと同じ功徳を得られるそうである。ポルノグラフィティがこの曲を歌ってくれるたびに、私も平和への祈りを心の底から捧げることができてる、そんな気持ちになった。

 

十六曲目、解放区。

崩れていた建物が戻っていく映像だけでもう泣いたが、本当に素晴らしい曲だった。あの日、あのタイミングで聴くことができてよかった。

 

YouTubeで事前に見ることができたショートのリリックビデオで曲の途中まで聴いていて、スタンド・バイ・ミーではないが、どこか遠いファンタジックな国の、誰かと夜の国の女王の様子を見て、そこから無理はしなくていい、疲れたときには眠ればいいというものを感じる、やさしいやさしい子守歌のような曲だと思っていたが、リリックビデオより先の部分、ラストのサビのところで、「この国は終わらない」と昭仁さんが力強く歌ってすべてがひっくり返る。この国は、様々なものを指しているのだろうが、先ほどまでの人間たちの争いや平和について考えさせられたあと「この国は終わらない 私とお前がここにいる限り 終わりはしない」と言われ、日本のことを思わないでいられなかった。日々は、生きているだけでわりといっぱいいっぱいで、平和のことも、国のことも、そんなに深く考えてはいないような愚かな人間だが、そんな人間でも息が零れた瞬間だった。

 

さらに曲が続いて「上を見上げてみよ 誰もの頭上に輝くクラウン」と言われてしまうのである。遠い国の誰かの曲が、一瞬で私にも向けられた曲になった。あのときの、寝転がって頭をやさしく撫でられていた気持ちから、腕を思いきり引っ張られて一気に背筋が伸びた気持ちへ変わった体験が、もう二度と味わえないのだと思うと、これは書いて覚えておかないといけないなと思って今回記録をしている部分もある。

 

十七曲目~空想科学少年、ハネウマライダーからのアポロ。

打って変わって賑やかに騒いだあと、アポロが入っていて、ああそうだ、これは周年の記念のライブなんだ、と気付いた。

 

花道の中央で歌われるアポロを見ていて神VS神の東京ドームの光景が思い浮かんだ。あの日からずっと心が東京ドームにあって申し訳ないような気持ちになるときもあるが、こうやって「あの日」の光景が浮かぶと、おこがましいが彼らがあの日受け取ってくれたものを返してもらっているような気持になる。もらいすぎではある。いつだって今が全盛期なんだ、と感じさせてくれたアポロだった。

 

二十曲目、サウダージ

花道から戻る途中で昭仁さんが立ち止まり、ステージの方から色のついたスポットライトが照らしてサウダージを歌い始めた、あの瞬間の絵を、私が昔の貴族だったら宗教画として残していたと思う。見ていた方向がよかったのか、完璧な絵面だった。本当に美しく、素晴らしい、最高な出だしで、あのとき私が見ていた景色をどうにかもう一度見たいものだが、それができないからライブに行くのはやめられないのだ。

 

二十一曲目、オー!リバル。

いわゆる3さいシングルの「歌いんさい」を本編ラストに持ってきてくれたことがとても嬉しく、最初から最後まで、このライブは一緒に声を出そう、という気持ちが強く伝わってきた。

 

 

アンコールのふたりだけのアゲハ蝶はもちろんいうまでもなく最高で、初の試みであったジレンマは全く上手く撮れないことが逆に面白くなってしまった。ポルノグラフィティの常に新しいことを試していく姿勢が本当に大好きだ。次回もあるのならばヘッドストラップの角度調整を忘れないようにしていきたい。

近頃じゃ映画館の中、VisualAlbum暁を見かけたりするだろう。

VisualAlbum暁の個人的な感想の覚書。



VisualAlbum暁なるものが映画館であり、どうやらMVをスクリーンで観る企画のようだという程度の認識でチケットを予約した。上映される一番近い映画館は少々遠く、仕事終わりに行ってぎりぎり間に合うかどうかの距離にある。そもそも映画館に行くのが得意な方ではなく、かなり気合を入れて行かなければならない、加えてワンピースの映画に行きたいと思っていたので連続で映画館に行くことになってしまうため、直前でかなり億劫になっていた。連日の暑さで疲弊しているのもあって、チケットの発券は済ませていたが最悪行かなくてもいいかと思うほどだった。そう、正直に言えばそこまで期待していなかったのである。ライブではないし、大きなスクリーンでMVを観るだけでしょう、そういう認識だった。

コンビニで発券したチケットがそのまま使えるのか、映画館で改めて発券の作業がいるのかどうかもわからないまま現地に向かい(コンビニで発券したチケットをそのまま渡せばよいシステムだった)、ワンピースを観に来ている大量のひとたちを羨ましいと眺めながら、せっかくだからライブのときには持ち込まないコーヒーなどを買って劇場に入った。

まず楽しくなったのはここである。ライブであればそのライブのグッズを持っているひとが多いが、この度はツアー前。てんでばらばら思い思いのポルノTシャツやバッグ。つま恋やFCUWのTシャツ、ディスパのバッグ、持っていないな持っているな懐かしいと思いつつ席に着く。周囲は老若男女。

ライブの前は緊張と興奮でいつも落ち着かないが、とても落ち着いた気持ちで始まるまでの時間を過ごせた。油断である。

事前情報をほとんど摂取しておらず、MVと制作風景が流れるものだと思っていたので、始まったときにMVでないストーリー映像が流れて一瞬面食らった。ああこういうものなのか、と思い直してすぐに、画面のいたるところにかくれんぼ絵本のように散りばめられているポルノグラフィティ要素にテンションが上がる。VSのポスターやCDジャケット、各種ロゴ。THUMPxのジャケット、めちゃくちゃ好きなんだよな、と思いながら、宝物のように子どもが「ポルノグラフィティ」を集めている映像にこちらも幸せな気持ちになる。

画面の中の子どもが頭になにかを装着したとき、ブレスのMVか、と思って始まるブレス。

この直前まで、楽しみにしていたMVはどちらかというと暁で初出の曲の方だった。映画館で初めて観る方がいいだろうと思って事前に見ないようにしていた。単純に時間がなかったのもあるが。

何度か観ているブレスのMV。個人的には「かわいい」分類で、穏やかで和むものであるはずだが、気付いたら泣いていた。疲れているせいで涙腺がゆるくなっているのか?二千円の元を取ろうというせこい精神から過剰に反応しているのか?と己と問答をするが、やはりどうにも泣けてくる。隣の知らないひとも泣いていた。

このあとも、観たことのあるシングルのMVすべてで泣いてしまった。ライブのときの興奮で出てくる涙とはまた違う、内部から染み出るように出てくる涙。曲によっておそらく涙の種類は違ったのだろうと今あとから思えばそうなのだが、観ているときには何故観たことのあるMVでこんなに泣いてしまうのか不思議だった。

Zombies are standing outで言えば、私はZombies are standing outを全人類が聴くべき曲だと思って生きている人間だが、映画館の巨大なスクリーンで、震えるほどの音響で聴くZombies are standing outはカッコよすぎて涙がでた。カメレオンレンズもどちらかと言えばそう。テーマソングは疲弊しているこころを包まれた癒しと、今回のツアーでも声が出せないであろうことへの憂いがないまぜになっていろいろなごちゃごちゃから。VSは、2019/09/07-08へ還りたいという祈りと、この道歩いたな、あのクレープ食べたなという思い出から。他様々。

個人的にMVは発売されたばかりのころは何回もリピートして見ているが、しばらくして耳に馴染んでしまったら見るのはなにかの作業をしている傍らに流すものになる。料理をしているとき、猫が膝に乗って寝ているとき、なにかをしている合間に見るもので、『MVを見るために見る』のは最初の方だけ。その映像を、何年か経ってから『MVを見るために』かつ『映画館という最高の設備』で見るということは人生で初めてのことだ。馴染んで、私と寄り添って生きている曲と、改めて真剣に対面する。ライブのとき、いつも「私とポルノグラフィティ」という気持ちで臨んではいるものの、現実ではやはりどうにも「私たちとポルノグラフィティ」という対大勢のなかのひとりという気持ちになる。しかしどうだ、映画館は贅沢なほど孤独な時間を大勢と味わう場所だ。私は私の五年と、ポルノグラフィティと向き合っていた。そういう時間を過ごした。

合間合間の映像が、よくわからないな、と思うことはあったが、そのよくわからなさも愛おしかった。私が私の時間とポルノグラフィティと向き合うことのように、どこかのだれかがポルノグラフィティと向き合っているいつかの時間を切り取るとこういう風に見えることもあるのだろうな、と感じた。

暁で初出のMVたちにも概ね同じように思う。

印象的だったのはナンバ-で、『続・ポルノグラフィティ』で聴いたときには爽やかでお洒落なイメージだったが、映像はアウトローな男女が瞬間を刹那的に生きている様。おそらく『今』だけを楽しんでいるふたりのおそろしいほど愚かで無邪気で無謀で幸福な時間だけを切り取ったもので、なるほどポルノグラフィティから与えられた材料でこういう料理をするひともいるのだなと目を見張った。

ポルノグラフィティの曲と、クリエイティブな映像。例えば家でYouTubeで流して見ていた場合、あそこまで真剣に見ていなかったかもしれない。どこか忘れてしまったがアジアのどこかの夜景の映像が美しかった。美しいものを美しいと感じる時間があることは幸福だと思う。アップテンポの曲が好きなので、曲だけ聴いたときは、暁と幽霊少女が印象に残ったが、映像と共に見るとナンバーやメビウスが印象強い。You are my Queenは「かわいい」印象だったものが、この曲こんなに「カッコイイ」のか、と感心したものだ。

敬愛する小説家の伊坂幸太郎氏のことを思い出した。シンガーソングライター斉藤和義氏とのコラボでは歌詞ではなく小説『アイネクライネ』を書いて、斉藤和義氏がそれを読んで曲を作った。映画監督山下敦弘氏とのコラボ『実験4号』は同じ世界と映像と小説それぞれで描いた。同じ方向を/同じ世界を切り取っても、各々が各々の持ち味をそのままに表現された作品だが、まとまりとしては同じ物のなかにある、あれも不思議な味わいのものだった。

閑話休題ポルノグラフィティが用意した素材で、様々なひとがワールドワイドに思い思いに作成したオムニバスの短編集を見させてもらったように思う。鳴り止まぬ歓声を浴びるひとが遠い世界のように、スクリーンに映るポルノグラフィティのふたりは、ずいぶんと遠いところのひとのようだったが、最後のシーン、チャイムが鳴ってドアを開けたときにポルノグラフィティがいるという夢のような場面、エンディング?で撮影風景が流れた時、映像作品内では背中しか見えていなかったふたりの顔が、とても柔らかく、やさしい笑みを浮かべていて、それがほんとうにとてもすてきな表情で、なんだかどうにもたまらなく、誇らしいような、愛おしい気持ちになった。

退勤時、元気がほしいとき、カーステレオでポルノグラフィティの曲を流す。無理矢理に耳に流し込んだり、口ずさんだりしていれば、完全には無理でも、なんとかなるところまでは浮上できる。今日の帰り道、少し大きめの音で暁を流した。自然と声が出た。今、自分は元気なんだとはっきり自覚でき、自覚できることが幸福に思えた。ワンピースも来週たぶん観に行くことができる。それくらい元気だ。ポルノグラフィティを好きでほんとうによかった。はやくライブに行きたい。

チケットがご用意されなかったCYBERロマンスポルノ‘20~REUNION~

CYBERロマンスポルノ‘20~REUNION~の個人的な雑記である。すべての文の末尾に※個人の感想がつく。

チケットのご用意がされない悔しさを胸にしたまま迎えた夜だった。

前回の神VS神がまだ消化できず、サブスクでライブ音源を聴くだけで涙ぐむような状態だが、それはそれとしてポルノグラフィティのライブにいきたいという欲求は常にあった。「まあこのご時世だからね」でさまざまなことを飲み込む日々に飛び込んできたCYBERロマンスポルノ‘20~REUNION~の知らせ。当初私は「配信ライブ」と勘違いしていたが、なんと少人数ながら会場に人が入れるということ。それを知った日から、とにかく徳を積まなければと、法定速度を守り、ねこの機嫌を取り、床に落ちているゴミを拾うなどして、チケットの当落を待った。個人的な用事で忙しい中届いたメール、スマフォの通知欄にすでに表示されている「チケットをご用意することができませんでした」の文字(ショックが大きく、このメールは未読のまま放置され、12/6の現在ようやく既読にすることができた)。それから、ラバッパーの友人宅で配信を共に楽しむ方向に気持ちを切り替えようとしたが、複雑な思いは拭えないままだった。

2020年12月4日、平日の18時オープン、19時開始というなかなかにあれな時間、私は金曜夜の渋滞、友人は子どもたちのお迎えやご飯、日常との戦いを終えて、気持ちの整理ができないままスマフォを繋いだテレビの前で待機した。手土産に持っていったピザ、友人が用意してくれた飲料やお菓子、すさまじい量が出来上がったグッズのポップコーン、なにかわからないが興奮する子どもたち、少しの日常と非日常、ライブ前特有の緊張と、会場にいる人間に対する妬み僻み、一曲目はアポロか空想科学少年じゃなかろうかなどと会話しつつ、その時を待った。

配信前に流れた注意事項。
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直前に流れる打ち合わせやリハーサルで吐きそうになる。期待と緊張、ひたすら溢れる嫉妬心、ポルノグラフィティポルノグラフィティをしている安心感。もう既に泣いてしまいそうだった。

今日の映像が流れた。そこから見られるの!?会場の人間も見ているの!?もう始まるの!?わあわあと騒ぎながら迎える始まり。会場に入っていくカメラの映像。我々配信組も会場にいるかのような気持ちを体験させてくれているのだろう。その優しさを感じつつ、会場に自分がいないことへの違和感で眩暈がした。

市民会館の大展示会のような会場の映像。流れているBGMが一瞬小さくなって始まるのか!?と思ったらもう一度流れ出す会場あるあるのフェイント。

響き渡るアキヒトさんのREUNION、割れんばかりの拍手の音、音と光、匂いと空気以外がそこにあった。

一曲目、アポロ。予想が当たったというよりはポルノグラフィティが持ってきてくれたように思う。アレンジからスタートしてギアが上がっていく。すごい、かっこいい、つらい、かっこいい。このあたりはこういう記憶しかない。ライブDVDとはまた違う、しかしライブ会場ではない、友人宅のテレビに向かって腕を振り、飛び跳ね、子どもたちが真似をしてきゃらきゃらと笑う。日常と非日常の融合、ライブとサイバー空間の融合、不思議な感覚だった。アキヒトさんが「会いたかった」と言った瞬間、当日はスッと心臓が冷たくなった。私たちも会いたかったのに、そこにはいないのに、私ではない人間に向かって「会いたかった」と呼びかけたことに嫉妬で狂いそうになった。しかしながら、アーカイブで見直しているときに思ったが、最初のアレンジ部分の変えている歌詞で「サイバー空間であなたと繋がりたい」と歌っているのである。「会いたかった」は、きっと、もちろん、配信組に向けても言ってくれている言葉だった。それはそれとして以後も嫉妬は続く。f:id:financieroisii:20201208233106p:plain


二曲目、オー!リバル。友人とふたりで「うわーこれかあ」と歓喜の声を上げた後、会場の人間はセトリに感動する声も上げられないのだ、と憐れむ方向に感情をシフトした。そしてその憐れみは、二曲目がリバルということでますます強まる。映像で流れる久しぶりのサイに笑っていると、サイが飛び出してきた。

ハルイチさんを踏みつけるサイ。f:id:financieroisii:20201208231121p:plain

突然のARサイに戸惑いながらも興奮した。動くサイを見るのはこれが初めてではない。14thライヴサーキット”The dice are cast”。確かあの時はチケット運がよく、前から四列目、NAOTOさんの目の前の席で、ライブ終盤(だったような気がする)で飾りだと思っていたサイが突然息を吹きながら動き出したのだ。そんな記憶の扉を開きつつ、「このARの映像って会場の人間には見えとらんのんよなあ」と配信マウントを取る我々。PVを思わせる増殖ポルノを楽しみつつ迎える大サビ前。「ああ会場の人間、かわいそうになあ」と憐れみながら友人宅でオーレーオーレーオを歌う。また現れたARサイと巨大ポルノ。サイが火を噴いたのは少し笑ってしまったが、「会場と配信のそれぞれ楽しさがあるよ」と伝えてくれているようだった。f:id:financieroisii:20201208231200p:plain


三曲目、星球。曲の始まりに「待って待って」と友人と騒ぐ。友人がPANORAMAの中で特に好きな曲。『クリスマスが近い週末に聞きたいポルノグラフィティの曲ベスト5』に入るであろう(個人の感想)曲を12月の金曜日に持ってきてくれるにくい演出だ。ARで飛び出す星球やすてきな物たち。さっきサイと戯れていたとは思えないポップでキュートなロックバンド。f:id:financieroisii:20201208233131p:plain

セルフ呼びかけを挟みつつMC。笑ってはいけない会場の人間を憐れみつつ友人とポップコーンを食べながら笑う。憐憫と嫉妬と愛おしさで感情が大渋滞していた。トークであまりにもネガティブとポジティブという単語が出てくるのでネガポジが来るかと思っていた。


四曲目、ワンモアタイム。急いで立ち上がる。思わず口をついた「はやい」という言葉。ワンモアタイムつま恋で聴いてから条件反射で特別に興奮する曲だ。こんな序盤で、こんなに興奮する曲を。サビの手前の照明がかっこよすぎて泣いた。配信の困ったところは、視界がコントロールできないところだ。普段のライブで、興奮しすぎると同じところをずっと見てしまって他のところに目がいかなくなるときがある。しかし、プロのカメラマンさんたちのカメラワークは容赦なく常にかっこいいところを見せてくる。もちろんライブ中の空間はどこを見ても100点満点でかっこいいのだが、それがカメラワークにより、5000点になったものを直接脳に刻まれているようだった。ワンモアタイム、やっぱりだいすき。我々が大興奮していると友人の子どもも興奮したのか、突然抱っこを要求してきた。10kgオーバーを抱えて飛び跳ねる友人。こんなに過酷なワンモアタイムがかつてあっただろうか。f:id:financieroisii:20201208230631p:plain


五曲目、2012Spark。聴くたびに「2012年って何年前?」となる曲。ワンモアタイムからの入りがかっこよすぎた。「上からのアングルかっこよすぎ」とふたりで叫んだ。アキヒトさんが「床めっちゃ光る」と冒頭の映像で言っていたが本当に床めっちゃ光っている。会場の人間これ見えてんの?と配信マウントも忘れない。床めっちゃ光るのめっちゃかっこいい。2020年と言おう言おうとしていたからなのか突然混ざる二番の歌詞も愛おしい。画面がこんなに点滅して大丈夫なのか!?(ポリゴン世代)と思いつつ点滅する画面がかっこいい。上から見てもかっこいいポルノグラフィティを存分に堪能した。f:id:financieroisii:20201208231318p:plain


六曲目、リビドー。紫と緑の照明がえろすぎる。赤林檎青林檎の曲が流れるとやはりどうしても「おっ」と興奮してしまう。膝をついて歌うアキヒトさんがえろい。下から見てもかっこいい。360°死角がない。ハルイチさんのギターソロをさまざまな方向から抜いていくカメラ。5000点にするのをやめろえろすぎる。f:id:financieroisii:20201208235455p:plain

七曲目、ヴォイス。赤林檎青林檎以下略。緩急の使い方がうまいピッチャーか?ワンモアタイムからのかっこいいゾーンはARもなくただただストレートにかっこいい。そんなかっこいいゾーンをしめくくるヴォイス。ここにいるという叫び、こちらの声が届いているという応え、アキヒトさんが歌っているだけなのに、我々と呼応しているかのような感覚だった。カメラがアキヒトさんの左胸を抜いた瞬間に泣いた。五億点にするのをやめろ。


セルフ呼びかけが気に入ったのか再びやりつつMC。配信のみなさんも楽しんでいます。アキヒトさんがチャットに触れた瞬間の課金ラッシュの光景が忘れられない。留学の話をしてくれているときに気になったのだが「ポルノグラフィティ」と紹介されて外国の方々はどういう反応だったのだろうか。

八曲目、シスター。大事なときにはやるイメージのある曲。PVを思わせる木の映像によって、背中合わせで歌っているふたりの姿が脳裏に浮かんで泣いた。いろいろなことがあっても、ポルノグラフィティでいていくれてありがとう。そして岡野昭仁くん、うたがうまい。


九曲目、ルーズ。ポルノグラフィティのおふたりルーズ好きだよね、私も好きだよ。きれいな光の粒の映像がサビで急激に動いて光の筋になって明るくなる映像を考えたひとが天才すぎる。静かなのに力強いサビが本当にかっこいい。岡野昭仁くん、うたがうまい。最後の「束の間の舞台」のあとのギターがチャララララーラーラーと入ってくるところいつも思うが卑怯だと思う。かっこよすぎて。f:id:financieroisii:20201208235244p:plain


十曲目、カメレオン・レンズ。いやこれは本当にAR様様。すごすぎる。さっきサイが火を吹いていたとは思えないかっこよさ。文字の入り方・フォント、映像、音楽と合わさってすさまじい威力があった。会場の人間リアルタイムでこれ見れてないのかわいそうと思えるくらい初見の衝撃がすごかった。こんなにかっこいいWhat color?があるだろうか。そして上着をずらして歌うえろい岡野昭仁くん。はだけさせるのはうまくできる岡野昭仁くん。f:id:financieroisii:20201208231510p:plain


十一曲目、海月。ポルノグラフィティのおふたり海月好きだよね、私も好きだよ。海月が始まった瞬間に友人が「海月飛び出すかな」と予言をする。『ナイトプールで流れていそうなポルノグラフィティの曲ベスト5』に入っているであろう曲だ(個人の感想)。静かなようで陽気とは違う明るさがあり、親しみやすいような神秘的でかっこいい曲。当然のように飛び出す美しい海月たち。最後のサビの手前のHold onで泡がいっぱい出てくる感じいつもすごく好き。映像がとにかく美しかった。f:id:financieroisii:20201208235057p:plain


そしてMC。己がイシダイと呼ばれていると気づかないアキヒトさんがかわいい。「ハルイチさんさん」「はい!」で笑ってしまったが会場の人間はこうやって吹き出すこともできないんだなと配信マウントを取る。


十二曲目、アゲハ蝶。神VS神の二日目のアゲハ蝶は本当に伝説だった。一年経っても忘れられない。私は他のファンとひとつになるという感覚を、実は去年まで持ったことがなかったが、あの二日目のアゲハ蝶、あのとき、確かに会場はひとつになっていた。ファイヤーダンサーや炎、水、屋外、そういったものはなく、ただ歌っているアゲハ蝶に、本当に心を揺さぶられ、ただただ涙した。あれから一年以上経ってのアゲハ蝶。歌の途中でも会場の人間の拍手の音に泣いた。私がここで手のひらを叩いている意味があるのか?視聴数、チャット数ではない、配信超しで手を叩いて、声を上げて、何か届いているのだろうか?醜い嫉妬心が消えることはないが、それでも歌は素晴らしかった。十二曲目までずっと嫉妬し続け、最後まで、今現在も会場の人間に嫉妬している。しかし妬むことと、ポルノグラフィティが好きと思うこと、配信ライブを楽しむということは両立するのだ。ぼろぼろに泣いている中、流れ始めた地球の映像。ツイッターで募集されたメッセージがアゲハ蝶に変わっていき、ライブ会場に集まり、ARとして会場中に飛び交っていく。配信の人間も、会場の人間も、みんなここにいるよというメッセージが痛いほど伝わってくる。去年のアゲハ蝶に対する、ポルノグラフィティからのお礼のようにも思えた。「届いてる?」「今返しているよ」「あの時はありがとう」「これからもよろしく」と言われているようだった(個人の感想)。私がそこにいなくても、声も拍手も届けられていなくても、ここにいても、届けてくれてありがとう。f:id:financieroisii:20201208231553p:plain


十三曲目、Hard Days,Holy Night。やるかなと思っていたけど本当にやってくれた。強がりではなく本気で会場の人間を憐れんだのは二回あったが、これが一回目だ。配信の人間が精一杯声を上げていることを「わかって」くれているとありありとわかる曲。サイレントナイトホーリーナイトもしっかり聖歌隊のように歌った。岡野昭仁くんの貴重な投げキッスいただきました。


十四曲目、VS。神VS神の影響でイントロが流れただけで未だに涙ぐんでしまう。上から見たロゴマークがかなりかっこよかった。大サビ手前で黄色い光が集まるハルイチさんが神のようだった。神VS神の音源を聴きすぎて最後でプッシュプレイが来そうで来なくて躓きそうになった。ひょっとして各所で今までのライブをちょっと意識していたりもするんだろうかと少し思ったりした。f:id:financieroisii:20201208234724j:plain


MC。一年三か月も見放さないでいてくれてありがとうとアキヒトさんは何度か言っているが一年三か月経ってもポルノグラフィティでいてくれてありがとうとしか言いようがない。


十五曲目、ハネウマライダー。MCからの曲の入り方が卑怯すぎませんか?『この曲の入り方が卑怯2020』があったら優勝しているくらい卑怯。いきなりそんなハモってハネウマライダー卑怯。ふたりだけ照らされたライトが卑怯。そこから盛り上がるのがもう卑怯すぎて卑怯。f:id:financieroisii:20201208235941p:plain

かなり驚いたのが会場の人間がタオルを回せれないことだった。これが二回目に本気で会場の人間を憐れんだ瞬間である。ハネウマライダーでタオルが回せれない、こんな拷問いったい誰が思いつくだろうか。こちら配信組はいつもより多めにタオルを回してやろうと友人と飛び跳ねていたところ、再び友人の子どもが興奮して抱っこを求めてきた。10kgを抱き、タオルを回す友人。こんなに過酷なハネウマライダーがかつてあっただろうか。いつもなら「ここにおるお前らと」と煽るところを「この時間を共有しているお前らと」と煽る岡野昭仁くん、珍しくカメラ目線で遊ぶ新藤晴一くん、五億点満点。


十六曲目、一雫。本編ラストでシングルのカップリング曲を持ってくる勇気、そしてその采配、天才ではないか?すごいよかった。『ポルノグラフィティの曲、ライブで化ける曲多すぎ説』があるが(個人の意見)、この曲もまた、ライブ映えが凄まじい曲だった。VSが出たとき「晴ラップ」などと言われていたが、今この状況、このライブでハルイチさんが歌って伝えてくれることに意味がある。「時間は距離じゃない」という歌詞、「ギターはその夢を描くペンで、汚れた手で触れてないかと今問いかけたらギターはどんな顔をするかな?」という歌詞もまた、今、この状況だからこそ、染みる。ポルノグラフィティである自分に恥じない行いを、ポルノグラフィティがしてくれているように、ポルノグラフィティのファンであることに誇りを持ち、恥じない行動をして生きていたい。そういう立派なものに、私はなりたいが、やはり最後まで会場の人間に対する嫉妬は消えなかった。それはそれで、そういうものなので、仕方ない。f:id:financieroisii:20201208235349p:plain


アンコール前に友人がトイレに行き、ついて行こうとした子どもが泣き叫びながらトイレのドアを叩いた。ほほえましいと思っていたらあっという間にメンバーが戻ってきたため、泣く子どもと一緒に友人のいるトイレのドアを叩くというカオスな空間が生まれた。ポルノポルノと言う間もなかった。


アンコール一曲目、新曲REUNION。いやすごいもうすごいすきすごいかっこいいこういうの我々がすきってわかっていてもってきてずるいかっこいいすごいサビもサビの前もかっこいいぜんぶかっこいい歌詞がすごいかっこいいしすごい言葉をこだわってるかんじがしてもうすごいつよいやばいだいすきという感じの曲だった。「リリースをするとかタイアップとかそういうんじゃなくて」とかそういうんじゃなくて、リリースを、して。百歩譲って配信でもいい、お金を払わせて。友人も言っていたがZombies are standing outのようなかっこよさがある。そして今これを打ちながら思ったが、絶対にやると思っていた全人類が聴いたほうがいいポルノグラフィティの曲Zombies are standing outを今回セトリから外している。それでもこの満足感。すごい。本当にめちゃくちゃかっこいいすごい。f:id:financieroisii:20201208230817p:plain


メンバー紹介のときようやくnang-changさんがいなことに気づいた。リハーサルのときはいたような?なぜかはわからないがツイッターで検索したとき「nang-changがいたらブーイングしたくなるからいないのでは?」という意見が目に入ってちょっと笑ってしまった。禁じられしブーイング。あとでインスタを見て泣いた。


ポルノグラフィティ、全盛期はこれからです」この言葉を今この時代に力強く言ってくれることが、どれだけ幸せで、ありがたいことか。これからも信じていい、ついていっていい、好きでいていい、生きていていいというブレない芯がある。弱くて愚かな人間でも、この一言だけで明日への希望がどれだけ大きなものになるか。今までもこれからもポルノグラフィでいてくれてありがとう。


そしてアンコール二曲目、ジレンマ。ジレンマがオーラスなのは久しぶりなような。実家に帰ってきたような安心感。そして伝説の脱げない岡野昭仁くん。f:id:financieroisii:20201208230945p:plain

最初なにかの演出かと思った。脱げん!と慌ててスタッフを呼ぶ岡野昭仁くん、怪訝そうな顔をしたあと見守る新藤晴一くん。袖がキュッとなっている衣装だったんだね。緩急がすごい。もうやだかわいいだいすき。ソロ回しの床の演出考えた人にノーベルかっこいいポルノ賞をあげたい。なんだあの波動は。めちゃくちかっこいい。ハルイチさんの波動がいちばん大きいのが「わかってる」感がある。カメラ目線が多くて優しさを感じた。f:id:financieroisii:20201208232441p:plain


最後のカメラを撮っているのはnang-changさんかと思っていた。どうやって撮ったんだろうか。

配信ライブは初めてだったが面白く、貴重な体験ができた。突如画面に現れるLINE通知、電池の残量が少なくなってきた通知もご愛嬌。音もリバルで少し乱れたように感じたが、それ以外はとくに不都合はなかったように思う。しかしながら、しかしながら、それはそれ、これはこれ。ライブはライブ、配信は配信。私はライブに行きたい。ポルノグラフィの、ライブに行きたい。次は私も「会えて嬉しい」と言われたい。こんな嫉妬と興奮と愛おしさで感情がぐちゃぐちゃになる体験も貴重と言えるのだろう。もう二度と体験したくない。次は私も会場の人間だ。

ポルノグラフィティ16th ライヴサーキットUNFADEDは私のためのライブだった。

ポルノグラフィティ16th ライヴサーキットUNFADEDの個人的な雑記である。


「これは私のためのライブだった」平成最後の年越しの一日前、12月30日のライブ中に、私は隣にいた友人に思わずそう言ってしまった。



今回のライブ、UNFADEDは「色褪せる」という意味の「FADE」に否定形をつけてUNFADED「色褪せない」という意味だということらしいのだが、詳しくはきっと発売されるであろうDVDとBluRayを観るか3月24日(日)夜8時からWOWOWで放送される横浜アリーナの公演を観てハルイチさんの説明を聞いてほしい。

このハルイチさんの説明でもあったのだが、今回は普段のツアーのようにひとつのアルバムの世界をテーマにツアーをするわけではなく、サブスクリプションサービス(意味は検索してほしい)による全曲配信が開始されたこともあり、今までのポルノグラフィティすべての曲が対象になった、ファンからしたら「何が出てくるかわからないびっくり箱、ロマンスポルノ(ポルノグラフィティのツアーではない大型ワンマンライブ)風の全国ツアー」ということになる。全曲配信サービスはすごい。ほんとうに助かる。

私は西日本豪雨の被害を受けて自宅が全壊しており、CDは発掘できたがCDを流す機器は壊れてしまったので、スマフォだけでポルノグラフィティの曲すべてが聴けるのはとても嬉しいことだった。もちろんラジカセを1台購入したし、車のステレオでも聴けるのだが、以前はCD5枚を入れられるコンポで聴いていたためCD1枚1枚変えるのは(とくにシングルは)なかなかに手間であった。全曲配信サービスはすごい。欲を言うならポルノグラフィティの歌うPOISONを入れてほしい(布袋さんのはあった)。



7月7日に被害を受けて、ポルノグラフィティ関連で安堵したことは「しまなみロマンスポルノのチケット、今回は友人に取ってもらってよかった」ということだ。しまなみロマンスポルノとは、ポルノグラフィティの故郷広島での凱旋野外ライブにして、メジャーデビュー20周年目に突入する2018年9月8日と翌日9月9日に行われる予定だったライブのことだ。チケットが水没せずにすんだから、ライブに行ける。途中で広島の被害により開催が危ぶまれたが、9月8日は雨がひたすら降る中で開催された(翌9月9日は残念ながら中止になった。それを受けて行われたライブビューイングが伝説だったのだがそれに触れると長くなりすぎるので割愛する。頼むから一連の流れを、NHKさんとも協力して是非とも映像化してほしい。公式さんお願いします) 。

9月8日に向かうバスの中で、友人とライブに行くときいつもお決まりで行っている「セトリ予想」をした。その中で悩んだのが、「∠RECEIVERをやるのかどうか」だった。私たちの頭にあったのは2011年の9月に行われたライブ、つま恋ロマンスポルノ~ポルノ丸~である。東日本大震災を受けて、東北に船を送ろうということでライブのタイトルが「ポルノ丸」だった。詳しくはDVDとBluRayが発売されているので観てほしい。真夏のような暑い9月の、アンコールラストお馴染みのジレンマを終え、ああもう終わりなんだとおもっていたところで、ポルノグラフィティのおふたりがステージ中央で東北に贈った歌が、∠RECEIVERだった。曲についてはアルバム∠TRIGGERを買うかサブスクリプションサービスで聴いてほしい。『雨が家を沈め 波が町ごとさらった 奪った』という歌詞から始まるこの曲をあの日あの時あのタイミングで歌うことは勇気もいったと思うが、それ以上に強い思いがあったのではないだろうか。しかし西日本豪雨のすぐあとのしまなみロマンスポルノでそれをやると、正直ポルノ丸そのまますぎないか?という気持ちもあった。結果的に言うと∠RECEIVERは歌われず、ポルノグラフィティは別の角度から被災地を応援、というより被災地と協力するものを用意してくれていた(会場であり、ゆるキャラであり、セトリであり、9月9日には実現しなかった地元の学生たちとのコラボであり)。そこで、なんというか、「被災者としてポルノグラフィティのライブに行く私」は完結した。つもりになっていた。

今回のライブはとにかくなにがくるかわからない期待に胸を膨らませていた。とくに絶対にやるであろう2018年9月28日に配信限定でリリースされたZombies are standing outがとても楽しみであった。Zombies are standing outは凄まじい曲だ。まだ聴いていないひとはサブスクリプションサービスか配信サイトで購入してほしい。せめてYouTubeでショートバージョンでいいから聴いてほしい。この曲が作曲アキヒトさんで作詞ハルイチさんというだけで私は震えた。そして曲が先にできて、この音からゾンビをテーマに持ってきたセンスにも震えた。曲を聴いて震えてほしい。カッコイイとはこういうことである。

https://youtu.be/q1UXQS1qxsQ

とにかくZombies are standing outが楽しみで楽しみで、そのことで頭がいっぱいだった。カウントダウン前日の公演、次の日のチケットもあり、年越しがポルノグラフィティというのは2011年の年末、幕張ロマンスポルノ〜DAYS OF WONDER〜以来で、そちらも楽しみだった(WONDERについてはDVDとBluRayが発売されているので観てほしい。幻想的で美しくもロックなポルノグラフィティの世界を見ることができる)。

UNFADEDのセットリストについてはもう唸り声を上げるしかなかった。こう来るか、の連続。私は3公演に参戦し、それぞれ中くらい近い、けっこう遠い、かなり近い席を体験したが、ライトやモニターの使い方が秀逸で、近くの席だとわからないカッコ良さも随所に散りばめられていた。余談だがポルノグラフィティでライトと言えば2012SparkのPVがハチャメチャにカッコイイので観てほしい(さらに余談だが2012Sparkを聴くたびに、「あれ、2012Sparkが2012年の曲……?」となる謎の現象に襲われる。大人になってからの月日ははやい)。

https://youtu.be/H4mAOHO18Ws

閑話休題。すべてが素晴らしすぎるライブで、Zombies are standing outも凄まじい存在感とパフォーマンスで最高のZombies are standing outを見せてくれた。Zombies are standing outを聴きながら「このZombies are standing outの演奏が終わったらもう1回Zombies are standing outをしてほしい」と思ったのを覚えているくらいZombies are standing outが大好きだ。

しかしながら、私がUNFADEDで一番記憶に残っているのはZombies are standing outではないのである。

今回のセットリストは公式からツアー終了後に公開されている。

http://sp.pornograffitti.jp/sr/

15公演という少なめのツアーながら曲の入れ替えが複数あり、私も3回行って3回ともセトリが違うという貴重な体験をした(公演数が少なくスタートもいつものツアーより気持ち遅めな時期だったので、クリスマスソングをやる12月25日迄の公演が少ないからだと思うのだがカウントダウンに『世界最速でクリスマスを祝います』とクリスマスソングをしてくれたのも最高だった)。

さてセットリスト、本編ラストの曲、ハネウマの次、ダイアリーか、レギュラーメンバー(ライブでよくやる曲)か。ライブがもう終わってしまう切なさと、次の曲への期待に拳を握りしめ、「色褪せさせない、色褪せてはいけないものがある」というアキヒトさんの言葉のあと、私の耳に入ったのは、目の前に飛び込んできたのは、∠RECEIVERの前奏だった。

その瞬間、私は「ポルノグラフィティのファン」から一気に「被災者」に引き戻された。決して嫌な意味ではなく。

UNFADEDは、本編ラストまでは、復興!応援!そんな色は全くなく、ただひたすらカッコイイ彼らを見るだけで、もちろん彼らもそんなことは一言も発していないし、∠RECEIVERを演奏する前にも災害のことには全く触れていない。それでも、私はかつてないほど泣いて泣いて、アンコールのポルノコール中も泣いていた。嬉しかったのが、友人がこのとき私を抱きしめてくれたことだ。「これは私のためのライブだった」と思わず言った私に、「私も聴きながら同じことを思ったよ」と返してくれた友人。雨が家を沈めて、まるごと沈んだ町の出身であり、あの日あの時、つま恋で∠RECEIVERを聴いていた我々のためのライブだった。

しかし、私のためのライブであると思ったあと 、私はポルノ丸のことを思い出していた。あの日の∠RECEIVERは東北のひとのための歌、今回の∠RECEIVERは私のための歌、そう考えてしまったし、それも間違いではないと思うが、この歌は受信者の歌だ。星の裏側で、足元で起きている、たとえ自分が関われないような出来事でも、逃げずに受信する受信者(∠RECEIVER)の歌。ポルノ丸のとき、私はちゃんと受信できていなかったのではないか?

日本で自然災害が多発して、SNSが浸透している中、自分が被災していなくても、家族、親戚、友人、知り合い、芸能人、誰かしらひとりは知っているひとがなにか被害を受けている、今はそんな時代ではなかろうか。誰かになにかがあったこと、それを受信して、常にボランティアをしろ募金をしろ、そういうことではなくて、受け止めて、自分なりになにかを思うことがあったか?

これは2018年の災害の被災者だけでなく、東日本大震災の被災者にも、もっと言えば曲のきっかけだったスマトラ島沖地震の被災者にも、ほかのいろいろななにかに傷ついたひとへ「忘れてないよ、記憶から色褪せてないよ」というメッセージでもあるのではないか?

よく考えて、受信して。ポルノグラフィティから私への発信、私から私への発信、それをようやく受信したのが今回の∠RECEIVERだ。



この曲はすべてのひとへの歌であり、UNFADEDは私のためのライブであり、あなたのためのライブでもある。



上手いと思うところはこの曲が本編ラストであり、アンコールではガラッと変わって賑やかで可愛く楽しいパフォーマンスを見せてくれた。アンコールラストのライラもいい曲なので聴いてほしい。

何が言いたかったのかまとめると、私の血肉、遺伝子、思考回路はポルノグラフィティで出来ているということである。ありがとうポルノグラフィティ、ありがとう。もうポルノグラフィティのおふたりが息をしているだけで興奮する脳に作り替えられているのに、いつも期待を受け止めて豪速球(ストレートだったり変化球だったり)を投げ返してくれて、ほんとうにありがとう。





そんなそもそも神がかっているポルノグラフィティが「神vs神」と銘打ったタイトルから期待で震えるライブが2019年9月7日-8日に行われるらしいので、もしポルノグラフィティのライブに行ったことはないがこの文章をここまで読んでくれて、時間と金銭に少し余裕があるひとは是非東京ドームに行って、一緒に伝説の目撃者になってほしい。